研究内容
介護予防に向けた持続可能な当事者共創社会の構築
超高齢社会に適応した介護予防対策には、住民主体の取り組みを地域に根ざした自然な形で促進する仕組みづくりが求められます。当研究室はその仕組みづくりに取り組んでいます。住民主体の介護予防事業を展開し一定の成果を創出している地域を対象に、2009年から継続しているコホート研究をさらに追跡し、高齢者の主体的、持続的な介護予防活動を定着させる要因を明らかにするとともに、健康長寿因果モデルの解明にとりくんでいます。健康意識が高くない人でも、そこに住んでいる間に保健行動がとれるようになる街、持続可能な当事者共創社会モデルの提案に挑みます。コミュニティ・エンパワメントに向けた多職種連携のあり方と課題
コミュニティ・エンパワメント支援に関わる専門職、研究者、当事者が集い、エンパワメント実践に基づく経験的根拠と大規模コホート研究に基づく科学的根拠の両側面から、コミュニティ・エンパワメントに向けた多職種連携のあり方と仕組みづくりについて探究しています。みらいエンパワメントカフェやワークショップなども開催中です!
コホートデータを用いた妊娠期(胎児期)から思春期までの保健福祉ケアシステムの確立
思春期に及ぶ成長発達への影響を勘案した「根拠に基づく早期支援」に向け、妊娠期(胎児期)から思春期までの当事者と家族の健康情報を集積する「健康情報管理システム」を構築しました。集積された情報とこれまでの地域コホート研究より得られた情報から、思春期に及ぶ成長発達への影響要因を明らかにするとともに、継続した情報集積のしくみと支援体制(妊娠期から思春期までの保健福祉ケアシステム)を探求中です。児童虐待の予防にむけた柔軟で効果的な養育者システムを築くことにも寄与する支援体制をめざします。
電子情報通信技術を活用した関連図作成支援ツールの開発〜科学的、論理的思考力と記録効率の向上に向けて〜
看護師は、アセスメント(情報収集、解釈、分析)、看護診断、看護計画立案、実施、評価というPDCAサイクルを繰り返しながら、対象者(患者やその家族)に最適な援助を提供します。看護師を目指す学生は、アセスメントから評価までの一連の看護過程を演習や実習を通して学修する中で、アセスメントの内容を関連図として図式化します。関連図は、学生が頭の中に描いている対象像(看護上の問題に対する因果関係)を可視化するものです。収集した情報を断片的に見るのではなく、全体的な情報と情報のつながりを整理し、看護診断を行い、看護計画を立案するために必要なものであり、看護過程の展開を通して絶えず更新されていくものです。そのように重要な意味をもつ関連図ですが、学生はこれを描くために相当の時間と労力を要しています。論理的に答えを出そうとすることに要する時間であれば重要な意味をもちますが、学生は、紙面上に鉛筆で行う「情報配置の修正」「新たな情報の追加」など、消しゴムで消して書き直すという本質ではない作業に時間と労力を費やしている現状があります。そうして描いたものは、情報やつながりの線が入り乱れ、可視化するどころか書いた本人さえも解読困難な状況があるのも事実です。私たちは、電子情報通信技術を活用した関連図作成支援ツールを開発(紙ベースで作成している関連図を、コンピュータやタブレットを活用して作成可能なWebアプリケーション)を開発しました。看護過程展開に向けた論理的思考力(情報と既知の知識を統合させ、複合的、論理的に分析し、表現する力)向上の観点からツールの妥当性を確認するとともに、開発したツールを演習および臨地実習での活用し、学生の思考の傾向を分析し、今後の実習指導への示唆を得るとともに、学生の科学的かつ論理的思考を育む教育展開に向け試行錯誤しています。